Column

土地と建物と暮らし方について
情報や雑学のコラム。

スペックオタクに気をつけろ

本日のコラム担当は、カメラや車の仕組み&機能美デザインが大好きな F です。
 
土地や建物をご購入・検討されている方々と日々接していて思うことがあり、本日のコラムを書くことにしました。悩まれている方に届き参考になるいいのですが。
 

土地を探している方の大半は「⚪︎⚪︎平米以上」という目的を持っています。
 
そこに疑問を持たないお客様が多いのですが、
 たまに目的と目標が入れ替わっているのでは?と、
その「数値」自体が絶対目的になっていて、本来の目的達成を逃しているのではと感じる事があります。
 
その数値スペック(例:広さ)を求めている具体的な理由を見つめ直してみると、実はそんなに頑固になる必要がない。代替が効いたり、工夫すればもっと良くなりメリットになることがあるかも、というお話を今回します。

 
 

◾️目的は何か、明確に

 
注文住宅向きの土地を販売していると、必ず言われるのが
 
「平家を建てるには⚪︎⚪︎平米(と言われている)」
 
ハウスメーカーさんや工務店さんが最初はまず一般的に無難なプランでおすすめするので、特に共通パーツを多用するメーカーさんや効率重視の工務店さん等の「建てやすい」得意なサイズ感で「とりあえず無難」な平米数を仰られることがあるように感じます。
 
「(目的)は⚪︎⚪︎平米の土地を買うこと」 なのですか?
 
また、⚪︎⚪︎ハウス、⚪︎⚪︎建設、などの特定メーカーの家を建てること自体が目的でしたか?
 
数値やブランドは、目的(暮らし良い家を建てる)を達成するための目標(あくまで指針)であって到達点ではない。
 
建物の配置の仕方や設計の工夫で本来の目的が達成でできる可能性があるのに、諦める方がいらっしゃるのが、勿体無いなと思います。土地の地域や雰囲気や価格が気に入っているなら、尚更です。

 
 

◾️目的と目標を間違えていた自身の失敗経験

 
これは、自身が家を建てた経験から強く感じています。
 
当初はデザイン性が好みで、宣伝が上手な設計会社に発注していました。西濃地方では特に有名な建築家(建築士)さんです。
 
名古屋市と一宮市の二つの土地のプランを出してもらいました。
しかし、設計の打ち合わせを進めていくと、高い断熱性能や健康的な家そしてエネルギー効率などの全てを軽視、というか無視している建築士と意見が全く合わずモヤモヤが大きくなるばかり。
 
そこで、自分自身に問いかけたのです
 
「この意見の合わない建築士の建てた家」にこだわる必要があるのか?
「見栄えデザインが良い」 せいで、冬は寒く、夏は暑い、光熱費のかかる我慢の家にしたいのか?
 
目的は、
健康、暮らしやすさ、店舗併用の機能、光熱費(エネルギー効率)
であることが明確になりました。
 
店舗併用だから見映えや話題性にばかり目が向いていたけれど、その建築士に家を建ててもらうこと自体が目的ではなかった!と気づけたわけです。
 
家族でそれを話し合い、キャンセルをしました。
家づくりが振り出しに戻る怖さがあるのかと思ったら、思いの外スッキリ爽快。しっくりこないストレスにもっと早く気づくべきでした。

 
 

◾️目的を達成する仲間とタッグ

 
その後、東北芸術工科大学で建築や環境デザインを教えている建築家で当時は「パッシブハウスジャパン」の幹部だった竹内昌義氏にご縁を繋ぐ事ができ、「デザインと性能の両立可能」な今の建物ができました。エコハウスの第一人者とも言われている断熱男です。
 
具体的に設計が進んで、建築費が高騰してきた時にも大きな分岐点がありました。
 
「ドラスティック(思い切った方法)が必要」
 
という竹内氏からは、
クローズの車庫をやめて屋根のみの車庫にするのはどうか、という提案がありましたが、セキュリティ面と倉庫性能の面で断りました。
 
私たち家族から「家を少し小さくしたら、費用が減るのでは?」と尋ねたら、竹内氏が「やってみましょう」ということで、一旦進んでいた設計を捨てて予算に合わせながら、生活に影響や我慢のないような設計を練り直してくれました。
 
その場に居合わせた担当アシスタントの方々は「え?やるの?マジで?」って感じで固まっていました。そりゃそうですよね、一旦完成した設計を壊して、一から設計し直しなんて嫌ですよね。
 
でも、竹内氏は「目的に向かってアイデアを出す、それが私たちの仕事ですから」と涼しい顔。もう、一生ついていく!と言いたいくらいカッコ良かったです。
 
目的は「”より良い暮らしをする”ための家を建てること」であるべき。
 
設計会社も施工する工務店も施主も、同じ課題にタッグを組んで戦う仲間。疑心暗鬼で疑いすぎるのも、盲信しすぎるのもだめ。対等で真剣なコミュニケーションが必要だと思います。

 
 

◾️その仕様スペックは何のためか?

 
例えば、車を⚪︎台入れたいからという具体的なことであれば、ある程度の平米が必要なことは明確。そこから逆算していけばいい。
 
しかし、もっとこだわる方では「リビングは⚪︎⚪︎畳以上」「窓の大きさ・数」「柱は⚪︎寸」「素材」みたいなピンポイントな目的に固執されることもあります。
 
ただ、その理由を詳しく聞くと
「友達をたくさん呼ぶために、リビングは広く」だったりします。その目的達成に具体的数値は無いのに、自分で「これくらいだろう」と決めているようです。
 
訪問した友達を喜ばせたい、ことに⚪︎⚪︎畳のリビングって絶対必須条件ですか?
その予算を心地よい断熱性能やインテリアや家具に振替えることは不可能なのでしょうか?
そもそも、友達のために自分の家を建てるわけでは無いし、優先すべきは家族では?
 
窓や柱の具体的な素材やサイズについても同様。何のために、その部材、素材、サイズにこだわっているのか?メーカーの言っている宣伝文句を鵜呑みにして受け売りの知識になっていませんか?
 
採光=窓の数や大きさでは無い
耐震=柱の太さでは無い
天然素材=その会社しか扱っていない天然素材って本当ですか?

 
 

◾️目的のため明晰さと合理的な柔軟さを

 
目的はブランドや数値自体ではないこと、を心に留めてほしいです。
何のためにその数値にこだわっているのか?を今一度考えていただきたい。
 
硬くなった思考を一旦脇に置いて、目的に向かう別のルートを見つける努力を。

 
 

◾️不動産をきっかけに深い家族関係を

 
また、土地や建物などの大きな金額の動くものに関わると、今まで気づかなかった家族の本質やそれぞれの価値観の違いに戸惑い、争うこともよくあることです。
 
ここが本来あるべき関係性を築く試練と考えて向き合いましょう。ゲームでよくある必須クリア条件です、避けてはゴールに進めません。
 
そこで、逃げずに向き合って話し合い、お互いを慮りつつより良い目的に向かうためにタッグを組む。小競り合いしているようでは、この大きな事柄を乗り越えられないし、後々悪い影響が出ます。
 
元々の関係性を見つめ直す良い機会でもあります、思い切って家族の新たなフェーズへ向かいましょう。

 
 

◾️ただし!唯一数値が大事な気密断熱

 
とはいえ、数値を気にした方が良いこともあります。
それは断熱等級。これは心地よさ、暮らしよさ、健康、光熱費に直接関係してくることです。
 
デザイン性にこだわるのも良いですが、まずは建物の基本性能が大事。
 
これも、自身がドイツパッシブハウス基準を目指した建物に住んでおり、おそらく日本の現在の断熱等級7かそれ以上の性能があるため、その素晴らしさに毎年感動しているからわかることです。
 
冬はエアコンオフでも家中どこでも気温20度超え、無垢材の床は床暖房設置なしでも冷たくない。
夏は3階建てながらエアコン1台で家中適温。
結露も全くなしで、カビとは無縁、掃除も楽々。
風邪も引かなくなったし、肌荒れも減った。
特に冬用のファンヒーターや灯油、半纏や冬用布団など不要で収納スペースが少なくて済んでいる分、趣味グッズの置き場が確保できました。
 
 

◾️断熱等級7!未経験ではわかるまい!

 
断熱等級7以上の暮らしについて、大手ハウスメーカーさんや設計会社、工務店さんの開発者や担当者や工事担当の方々に至るまで、未体験であることがほとんどでしょう。
 
未体験の方々が、その性能の素晴らしさを説明もおすすめはできないでしょうし、ぶっちゃけ良さを知らなければ重要性にも気づかず、おすすめもしないはずです。国の気密断熱など建物性能に対する基準や制度も年々上がり厳しくなっているのに、です。売っておしまいの思考になりがちなのか、建物性能を軽くみている風潮が大変残念だなと思います。
 
共働きが増えたとはいえども、家に居る時間が圧倒的に長いのが奥様、お子様、高齢の親などです。その大切な家族の暮らしやすさ、健康に気遣った建物を建てられる旦那様(および世帯主)であってほしいものです。

 
建築してもデザインやインテリアは後から変更できますし、間取りもある程度なら可能。ただし、躯体性能アップの改修は大掛かりで費用もかかり現実的ではありません。
 
 

◾️より良い暮らしのための努力

 
長い文章ですので、ここまで読まれた方には感謝申し上げます。
 
ただ、本当にみなさまにはより良い暮らしをしていただきたい。素敵な未来を掴み取っていただきたいと思います。そのためには、簡単にあきらめず、知恵を絞ったりコミュニケーションを取ったりの努力を惜しまないでほしいと考えます。
 
みなさまに幸あれ~

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