|積読「フライブルグのまちづくり」を読む
不動産業者ですが、ドイツ語を趣味で学んで約10年。本日のコラム担当の H です。
ひと月に1回、ドイツ関連のひとつのテーマについてドイツ語で語り合うオンライン講座に参加しています。令和4年2月のテーマは、不動産業の私が提案。
「ドイツの環境都市フライブルグの環境保護政策について」
それに備えて、フライブルグの都市計画を知ろうと数年前に購入したまま読んでいなかった本のページを、ついに開くことになりました。その本の名は、
「フライブルグのまちづくり」 村上敦 著(学芸出版社, 2007年)
この本は、フライブルク市のVauban(ヴォーバン)地区の都市計画について書かれています。
本の中で紹介されている都市計画の内容は、自然や環境、そして人にも優しい。それらは、精神的に豊かで持続可能な街を構築するため緻密につくられており、とても魅力的です。
SDGsが叫ばれる昨今の日本。日本がこの都市計画を参考にできたら、物質だけにとどまらず、精神的にもっと豊かな社会へ向かって行けるのでは?と感じました。
今回のコラムは、この本からVaubanの都市計画でとくに魅力的に感じた以下の3 つのポイントをピックアップして3回シリーズでご紹介します。
ドイツ、Vaubanの都市計画ポイント 3 つ
1:ビオトープネットワークによる緑豊かなまちづくり
2:クルマのないまちづくり
3:エネルギー消費が半分以下になるまちづくり
この 3 回を頑張ってお読みいただければ、書籍一冊を読んだ気分になれるよう、私 H も頑張ってまとめます。
(ポイント1)ビオトープネットワークによる緑豊かなまちづくり、の魅力
今回コラムは、3 つの魅力から1つ目の「ビオトープネットワークによる緑豊かなまちづくり」について。
・ビオトープ(Biotop)とは
大辞林によると「動物や植物が恒常的に生活できるように造成または復元された小規模な生息空間。」、そしてWikipediaでは「ドイツ連邦自然保護局ではビオトープを「有機的に結びついた生物群。すなわち生物社会(一定の組み合わせの種によって構成される生物群集)の生息空間」と位置づけている。」とのこと。
【生物の生息する場所。その土地特有の地形や生態系や気候に配慮し、人間がほんの少しだけ手をかけ、市場経済の破壊活動から守ってやれば、ひとりでに豊かに実るものでなければなりません。】と、本には書かれています。
住宅環境に、意識的に自然や緑を取り組むことにより、暮らしの質は高まり、住宅地・市街地も・郊外も含め、地域全体が魅力的で活気あるものになるのです。
|Vauban的、意識的な自然と緑の取り入れ方
Vaubanでは、ビオトープをネットワーク化させることで緑豊かな住宅地・まちがつくられました。
【生物の生息する場所。その土地特有の地形や生態系や気候に配慮し、人間がほんの少しだけ手をかけ、市場経済の破壊活動から守ってやれば、ひとりでに豊かに実るものでなければなりません。】
ということで、上記のようなビオトープを住宅地に配置し、ビオトープ同士が線で結ばれる事(ネットワーク化)で大きな相乗効果を発揮させます。
ネットワーク化が重要な点で、ビオトープが住宅地内で離れてバラバラに点在するのでは、あまり意味がないため、Vaubanでは、以下のような流れでビオトープがネットワーク化されました。
・Vauban的ビオトープのネットワーク化
(1)Vaubanの住宅の端を流れる小川があり、その小川沿いをビオトープにする
(2)住宅地域内には細長く設計した緑地公園を配置
(3)通り沿いに植えられた街路樹
(4)道路沿いの住宅の玄関前の前庭(前庭は緑化の庭に限定)
(
5)道路沿いの住宅同士の前庭(緑地化した前庭がつながる)
道路沿いにある住宅の玄関前の前庭が緑化されたものに限定されているため、公共の緩衝帯(緑地など)と結合。さらに、隣近所で緑のラインを連結させ繋がりを持たせる。
(6)建物の屋根や壁を緑地化する
(7)路面電車の軌道を緑地にする
これら(1)~(7)の繋がり=ネットワーク化で、街中から地域全体までの一帯が、ビオトープの機能を持った緑に溢れています。※ここで使用した画像はイメージ写真です。
そのため、そこに暮らす人々とともに生態系に含まれる全ての生物・植物がお互いを尊重し譲り合い、無理せず健やかに暮らしていけるのです。
|扶桑土地の小さな庭から、私たちのできること
私ども有限会社扶桑土地の建物の周りに、小さな庭をつくりました。建物の東面には、愛知県道190号(旧国道22号)が走っており、その通り沿いにも緑を植えました。
当社から100mほど離れたところに酒見神社があり、春には桜、夏の新緑、秋の紅葉が楽しめる緑に溢れています。
その酒見神社の自然のビオトープと私たちの庭の緑がつながると、2箇所で一体化したビオトープとなリます。
このように住まいの庭が、それぞれ隣近所・両隣同士の緑でつながれば、街中が日々緑に溢れ、四季の移ろいが楽しめ、自然で心地よく健やかな暮らしになります。
いつか、この日本の街中にも緑に溢れて、自然や人にやさしくなることを期待します。
日本でのSDGsが企業の単なる宣伝のツールではなく、本当の意味での持続可能な社会に向かって一丸となって取り組んで行けることを、強く願っています。